いよいよ鼠ではない。 苦沙弥君、これが二十世紀なんだよ。 十五円 ここにおいてか鼠の出口を研究する必要が生ずる。 そのあとは静まり返って、枕をはずしたなり寝てしまう。 活版の睡眠剤である。 いいですか。 細君は横を向いてちょっと澄したが再び主人の方を見て、 魂であるから常にふらふらしている 鼻は猫にとっても急所である。 今度はギーと雨戸を下から上へ持ち上げる音がする、同時に腰障子を出来るだけ緩やかに、溝に添うて滑らせる。 つるつると咽喉を滑り込むところがねうちだよと思い切って箸を高く上げると蕎麦はようやくの事で地を離れた。 　吾輩は叙述の順序として、不時の珍客なる泥棒陰士その人をこの際諸君に御紹介するの栄誉を有する訳であるが、その前ちょっと卑見を開陳してご高慮を煩わしたい事がある。 この禿を第一番に見付けたのは姉のとん子である。