ええ羽織何点代価いくらと云う風に表にして出すんです。 いやそりゃ、どうもこうもならん。 なるほどとは思ったようなもののその時から、とうとう失恋の果敢なき運命をかこつ身となってしまったくだらない失恋もあったもんだ。 猫などは生涯こんな恥をかいた事がない。 何か持ち上がるだろうと襖の陰から謹んで拝見する。 こう云う境界に入ると物凄い内に一種の愉快を覚えるのは誰しも同じ事であるが、吾輩はこの愉快の底に一大心配が横わっているのを発見した。 とにかく変な恰好になった。 もう少しで失恋になるからしばらく辛抱していらっしゃい。 　迷亭はそんな事には頓着なく奥さん、昨日はね、屋根の上で玉子のフライをして見ましたよと妙な事を云う。 今日は忘れたと白状する。 老人に碌なものがいないのはこの理だな、吾輩などもあるいは今のうちに多々良君の鍋の中で玉葱と共に成仏する方が得策かも知れんと考えて隅の方に小さくなっていると、最前細君と喧嘩をして一反書斎へ引き上げた主人は、多々良君の声を聞きつけて、のそのそ茶の間へ出てくる。 昔しから婦人に親友のないもので立派な詩をかいたものはないそうだそうかなあと寒月君は顔の奥で笑いながら答えた。 鳳眠を驚かし奉ってはなはだ相済まん。 僕は二階の窓から彼等の体操を目撃するたんびに古代希臘の婦人を追懐するよまた希臘かと主人が冷笑するように云い放つとどうも美な感じのするものは大抵希臘から源を発しているから仕方がない。