大和魂！　と新聞屋が云う。 この陰士は背のすらりとした、色の浅黒い一の字眉の、意気で立派な泥棒である。 山の芋のねだんまでは知りません 盗られたあとなんだからと平気な事を云って帰って行く。 そりゃ奥さん意地張りたい いいじゃありませんか、あなたに買っていただきゃあしまいし 猫だって頭の刈り方を二十通りも考え出す日には、こう気楽にしてはおられんさ。 あなた方は睡眠中で一向気がつかなかったのですな 迷亭に極っている。 どうもこの気候の逆戻りをするところはまるでハーキュリスの牛ですよと図に乗っていよいよ変ちきりんな事を言うと、果せるかな細君は分らない。 さあこれからがいよいよ失恋に取り掛るところだからしっかりして聴きたまえ先生しっかりして聴く事は聴きますが、なんぼ越後の国だって冬、蛇がいやしますまいうん、そりゃ一応もっともな質問だよ。 分らんばってんが――それじゃ奥さん少しも舐めなさらんか オタンチン・パレオロガスの意味を聞かして頂戴 こう云う境界に入ると物凄い内に一種の愉快を覚えるのは誰しも同じ事であるが、吾輩はこの愉快の底に一大心配が横わっているのを発見した。