JO39 (アシュワース)ASHWORTH チノパンツ

普通の人類の生息する娑婆へ出たのだ、文明に必要なる着物をきるのだ。 落雲館の生徒は少年である。 猛然として馳け出した。 地球が地軸を廻転するのは何の作用かわからないが、世の中を動かすものはたしかに金である。 これがはなはだ蝉取り運動の妨害になる。 しばらくすると二三人の職人が来て半日ばかりの間に主人の屋敷と、落雲館の境に、高さ三尺ばかりの四つ目垣が出来上がった。 主人はなぜ笑ったかと云うと全く嬉しくって笑ったのである。 しかしすべての大事件の前には必ず小事件が起るものだ。 人の運動の妨をする、ことにどこの烏だか籍もない分在で、人の塀へとまるという法があるもんかと思ったから、通るんだおい除きたまえと声をかけた。 で運動は教育上必要なものでありますから、どうもこれを禁ずる訳には参りかねるので。 今度は地面の上へ寝たぎり動かないから、こっちの手で突っ付いて、その勢で飛び上がるところをまた抑えつける。 しかのみならず五本の毛へこびりつくが早いか、十本に蔓延する。 　いかに馬鹿でも病気でも主人に変りはない。 もし相手がこの野蛮な振舞をやると、向って来たところを覘いすまして、いやと云うほど張り付けてやる。