本当にさ。 ただきたならしいのが欠点である。 海鼠を食えるものは親鸞の再来にして、河豚を喫せるものは日蓮の分身なり。 なるほどフロックコートを着ている。 どうせ気狂だもの。 深夜蝋燭を立てて、広い部屋のなかで一人鏡を覗き込むにはよほどの勇気がいるそうだ。 友人は気のない顔であっても乞食か立ん坊だよ。 退校にならないように出来ないでしょうかと武右衛門君は泣き出しそうな声をしてしきりに哀願に及んでいる。 それがわからないの。 長火鉢と云うと欅の如輪木か、銅の総落しで、洗髪の姉御が立膝で、長煙管を黒柿の縁へ叩きつける様を想見する諸君もないとも限らないが、わが苦沙弥先生の長火鉢に至っては決して、そんな意気なものではない、何で造ったものか素人には見当のつかんくらい古雅なものである。 ちっとも苛くはない やはり懐手のままである。 厄介な毬栗坊主だ。 主人はこの時ようやく本心に立ち返って、精神修養の結果を存分に老人の服装に応用して少々驚いた。