わたしも他言はしないからと穏やかにつけ加えた。 なるほどと今度もなるほどですましてしまった。 しかしてその一人が即ち主人である。 現に寒月がそう云ったから仕方がないです あら、そりゃ、あんまりだわ。 とある。 とうとう鰻が天上して、豚が仙人になったのさ どうせ無風流ですわ。 真面目なんですとさ。 話す事があるなら、早く話したらいいじゃないか 飄然て、云いようがないの？ 細君は憚りである。 主人は飽くまでももったいぶってそうさなを繰り返している。 　主人のあばたもその振わざる事においては宗伯老のかごと一般で、はたから見ると気の毒なくらいだが、漢法医にも劣らざる頑固な主人は依然として孤城落日のあばたを天下に曝露しつつ毎日登校してリードルを教えている。