こんな生徒のいる学校は、学校の恥辱であって、こんな人民のいる国家は国家の恥辱である。 雪江さんはあら人の悪るいと新聞を茶碗の下から、抜こうとする拍子に茶托に引きかかって、番茶は遠慮なく新聞の上から畳の目へ流れ込む。 いくら仕てやりたくても、貰いたくても、出来ない相談である。 そう、それじゃ雪江さんは、どんなところへ御嫁に行くの？ 人間も返事がうるさくなるくらい無精になると、どことなく趣があるが、こんな人に限って女に好かれた試しがない。 踵のまがった靴を履いて、紫色の袴を引きずって、髪を算盤珠のようにふくらまして勝手口から案内も乞わずに上って来た。 　この時主人は、昨日紹介した混沌たる太古の眼を精一杯に見張って、向うの戸棚をきっと見た。 どうせ気狂だもの。 そうなさい。 坊やちゃんもなかなか自信家だから容易に姉の云う事なんか聞きそうにしない。 本当にあきれ返ってしまうの 泥棒の方が虎蔵君より男振りがいいので、こっちが刑事だと早合点をしたのだろう。 ああ云う事をする者を漢土では玉人と称したもので至って身分の軽いものだと云いながら主人の方を向いて暗に賛成を求める。 世故にたけた敏腕家にも似合しからぬ事だ。