妻君の鼻を食い欠きたくなる。 そう威張るもんじゃないよ。 ただヴァイオリンが弾きたいばかりで胸が一杯になってるんだから妙なものさ。 寒月君も落ちつき払ったもので 累々として喪家の犬のごとし。 迷亭君はぬからぬ顔で、 狭い土地だから、買っておればすぐ見つかります。 吾々を慰藉し、吾々を完全にし、吾々を幸福にするのは全く両者の御蔭であります。 これからが面白いところです、ちょうどいい時ですから聞いて下さい。 ええ実際癲癇かも知れませんが、しかしあの音色だけは奇体ですよ。 要するにヴァイオリンを買ったのか、買わないのかと主人がじれったそうに聞く。 起きるんだよ。 ハハハハ、こりゃ面白い本だ。 吾人の情操を優美にし、品性を高潔にし、同情を洗錬するのは全く両者の御蔭であります。